原画は最近売れてきた七尾奈留氏。目が特徴的だが、カナリゲームにあった素晴らしいイラストを描く。なのでイラストには期待してもらいたい。シナリオ面では「生と死」がテーマ。死神も登場するし。現代のあくせくする生活とは反対に、田舎を舞台として穏やかだが緊張感ある物語が展開される。現実感という点では少し外れているから、そこを期待する人はちょっと覚悟しておいたほうがいいかもしれない。でも、段々引き込まれ、こういう世界もあるのだなぁとはまってしまう。<P>このゲームは、夏を舞台に第４章あるが、もちろん隠し要素として違う章も存在する。物語はそれぞれ個々のものとなっているが、何かしらの点でリンクしているところもそそられる。まったり～とした物語の後ろには常に緊張感がある。それはやはりこのゲームが人間の生と死を暗示しているからだろう。ただの恋愛というべきでなく、それより少し突っ込んだ暗い部分だったり、希望だったりを感じられる。世評も結構高いので、やって損はない。音楽面も良し。少し残念なのは、章の今半での展開がやや滅茶苦茶というところだろうか。だが、この手のゲームにはつき物なので目をつぶってもらいたい。<P>きっと期待はうらぎらない思う。（性描写はあまりないのでそこらへんはご了承を）
田舎の夏に繰り広げられる生と死の物語。全四章のオムニバス形式ノベルもの。ただし、幻想ミステリー風味。<P>『水夏』をどう評価するのかは難しい。誉めるべきところも、貶すべきところも多すぎて選択に悩むのだ。ただ、全体を通してみればすばらしい作品である。劇中における空気の作り方はすでに十分の賞賛を受けている。それは萌えに限らず、夏の田舎の表現であるとか、登場人物たちのユーモアに現れている。そしてこのノベルゲームでもっとも目立つ特徴はシナリオの構成にある。こればっかりはプレイして貰わないと判らないので、ここでの説明は避けておくが……。<P>全体を通したテーマは生と死である。前作『Infantaria』や次作『D.C.～ダ・カーポ』をプレイすれば気が付くかと思うが、サーカスのシナリオの家はテーマによって作品水準が大きく変動する。『水夏』では上手くそれが働いたようで、高水準にあるといっていいだろう。テーマの表現に関しては、人間観察の足りないところはあるが、最終章の見事さで帳消しにしたいところだ。<P>『水夏』の性描写は薄いので、そういうものを求める方には勧められない。萌えを求める方には自信を持って購入を進言したいところだが、テーマがテーマだけに純粋萌えユーザーには少し辛い内容かも知れない。ただ、その分の見返りはあると思うが。とにかく面白いノベルものを求める方には、ぜひプレイして貰いたい作品だ。
