この作品に関して、もはや他のゲームと同列の扱いをすることは不可能と思われる。圧倒的な感動を誘うシナリオ描写、複雑なテキストの迷宮、諸所に点在する鋭いメッセージ。いずれも秀逸な構成でユーザーの食指を誘うのだ。次々と予測の付かぬ裏切りが起こり、それの数だけ多くの救いもまたあり、あらゆる人の生命感に訴えかけるものを感じる作品である。<P>また、この作品からことさらに『子』の尊さを思わせる。周りの擦り切れた環境と合わない、子供そのものの心を持ったヒロイン達と、子供を知らないまま大人となった主人公のギクシャクした交流に心温まると同時に、それが遠く昔に失われた子供の心を思い出させてくれるのだ。それは痛みであり後ろ向きな諦めかも知れないが、口頭で否定しようとも人は子供のままでいられることを望まずにいられないのかも知れず、それゆえにこれが編まれたのだろうか、と思う。<P>この作品は、それ自体が生命を宿している。見てくれだけは食わず嫌いを誘ってしまうとはいえ、未プレイの方に『生命』を感じてもらうことを願って止まない。

一見すると普通のギャルゲーと思われるだろうが、箱を開けるとまったく違う。舞台は海の近い田舎町。夏。「家族」をテーマとした重厚なシナリオ。心に響くサウンド。そして何よりも、キャラクター一人一人が「一生懸命生きてる感」を出している。そして泣ける。このゲームは絶対プレイするべきである。