「新世紀エヴァンゲリオン」の物語構造やキャラクター配置を流用し、サザエさん的な雰囲気で再構成した作品。作画は丁寧で演出も堅実、かつ随所にくすぐりがあって気が利いている。<P>　舞台は鎌倉をモデルにした天網という町。ちゃんと切り通しもでてきます。主人公達はやはり中２で、謎の生物兵器を使って謎の生物兵器と戦い、地球を守ります。物語の鍵を握る謎の同級生もおります。とはいえ「エヴァ」に漂う終末感は微塵もなく、明るく楽しい学園生活が展開し、戦いとのギャップが鮮やか。特筆すべきは声優陣の芸達者ぶりで、一連のオヤジキャラ、おっさんキャラの造形は彼らの高度な芸が無ければ成立しなかっただろう。<P>　物語はあえて深い問いかけを封印し、友情とかほのかな恋心といった古なじみな価値を使って大団円に持ち込むが、語り口が絶妙なため、全く物足りなさは無い。むしろテーマだけ大きく広げて畳みきれずに終わる昨今のアニメにあってこの作品の高い完成度は評価すべきである。唯一主人公の正体だけが明かされずに終わるが、これも時間切れとかそういった事情ではなく、あえてそこでスパッと切る事によって余韻を残そうという仕掛けであって、好感が持てる。<P>　この作品と「エヴァ」との関係はレヴィ＝ストロースの構造主義を思い出させるが、語り口が違うだけでこれほどまでに違った印象になるとすれば、構造主義の射程距離というのはもしかしたら思っていたほどでは無いのかもしれない、とも感じさせてくれたりも。