物凄く面白いオペラ映画。凄くうるさいことを言うと、ゲオルギューはトスカの声ではない。なので、いちばん有名なアリア『歌に生き愛に生き』は、確かに他のトスカ歌手と比べると多少は遜色があるかもしれない。なぜならば、一つの大きな見せ場であるはずのこのアリアが、全体を通じると大して目立っていないからだ(だからと言って、ヘタというわけでは全然ないので念のため)。でも、声が合っていないからと言って、それがなんだというのだ。見ていると『これが正しい』トスカだ』という気持ちにさせられる。それほどゲオルギューは素晴らしい。無論、アラーニャも素晴らしい、ライモンディも素晴らしい。もちろんセットも。映画として完璧な出来だと思う。オペラ、と聞くだけで腰が引ける方にも、是非お勧めしたい作品。役者が揃うと、オペラはここまで楽しくなれるのだ。ゲオルギュー&アラーニャの次回作が本当に待たれる。
こんなに素晴らしいとは。<BR>あとで特典の中のインタビューで、製作者(故ダニエル・トスカン・デュ・プランティエ、惜しい方が、残念です)がトスカはイメージがマリアカラスで作りたかった、と言っているように、私もトスカはかなり難しい役だと思っております。同じくマリアカラスを越える人は出ないのでしょう。<P> しかし、ゲオルギューのトスカは素晴らしかった。また製作者を例に出しますがあの、コヴェントガーデンの「椿姫」に次ぐ素晴らしさです。あの「椿姫」はもっと素晴らしいです。そんなことはどうでもいいのですが。<P>演出も無駄な背景を一切カットして、舞台のシーンにおける感情の揺らぎに必要なものだけを配置して撮るという方法は本当に素晴らしい。ちょっと、日本の「能」みたいな!感じがしませんか?<BR>さらに背景に黒を持ってきて、光は蝋燭で幻影的にドラマティックに各シーンをつむぎだします。<P>そしてトスカの赤。スタンダールの言う「赤と黒」はこのことか?と思うくらいの素晴らしい対比です。(冗談ですよ)<BR>スタジオのシーンとの対比も人間味があふれてきれいに決まってますし、<P>外部の風景を絵画のコラージュ風に(言葉が違うかもしれませんが)決めて、それも単色で抑えてぼかしている、というセンス。かなり昔の、そこであった一つのドラマですもの、そのぼかし方が合っているんです。<P>夢の2時間でした。映像はきれい(DVD自体の製作という意味で)ですし、特典はインタビューがたくさんはいってますし文句のつけようがない作品です。良いものはいいですねえ。音の定位もいです。
美男美女の夫婦スターとしてすっかり乗りに乗っている感じのアラーニャとゲオルギューのカップルが、この映画仕立ての『トスカ』でも、息の合った迫真の演技を見せてくれます。まずアラーニャの、あまり華やか過ぎない力強い声は、このオペラのような悲劇的・英雄的性格の役柄にぴったりです。彼の爽やかな演技と美声は、いつもながら同じ男性の目から見ても思わずうっとりしてしまいます。またゲオルギューは、失礼ながらスタイルは抜群だがお顔は結構怖い点や、高音よりもむしろ低音域の迫力ある歌唱により魅力があることなどから、トスカはまさにぴったりのはまり役だといえるでしょう。それに加えて、ライモンディ演ずるスカルピアの、実にいやらしく恐ろしいこと!(決してけなしている訳ではありませんよ)まさに適材適所というべき配役です。また、特に第二幕での黒と赤を基調とした画面造りは、他の演出にもよくみられるオーソドックスな配色ではありますが、やはりこのオペラの雰囲気をよく表していて効果的です。ストーリーの合間に、ところどころスタジオでの録音風景を挿入するという手法は、あまり効果的とは言えませんが、なかなか興味深い趣向です。全曲が終わったあと、メンバーのひとりが、『カバレリア・ルスティカーナ』の中の有名な合唱曲“a casa a casa amici(さあみんな家に帰ろう)”の旋律をつぶやいている風景なども、ちょっとしたご愛嬌です。ただ、ときおり歌にかぶせて原作にない台詞を語らせてしまう部分があるのは、あくまでオペラ作品としてこのディスクを楽しみたい者にとってはあまり歓迎できません。