戦場のピアニスト 戦場のピアニスト
 
 
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戦場のピアニスト :

 語られぬ事実がタブーとなるには理由がある。嫌なことは思い出したくないからだ。けれども、タブーのまま語られずにいれば、その事実は忘れられ、同じ過ちが再び繰り返されるかもしれない。それは避けなければならない。シュピルマンの回想録が1946年の出版直後に発禁処分となったこと、それが今になって再出版・映画化されたことの経緯は、このような観点から説明することができる。ロリン・ポランスキー監督は、インタビューの中で、「この映画が近い将来における悲劇に対する何らかの抑止力になれば」と語っている。<P> この映画が提示する事実は、あまりに重い。まるで終わりのない悪夢のようだ。何の罪もない人たちが、突然住居を追い出され、理不尽に打ちのめされ、恣意的に殺される。不安と恐怖と!絶望と死が、無差別に連続して留まるところを知らない。ナチス・ドイツによるワルシャワ支配は、「この上なく完璧な秩序がワルシャワを支配している」(セバスティアーニ)と言われた、100年前のロシア皇帝による恐怖政治よりもはるかに凶暴かつ野蛮だった。ポーランドにいた数十万ものユダヤ人は、そのほとんどが虐殺された。僅かに生き残った人たちは、見つからないように身を潜めて露命をつなぐので精一杯だった。残酷かつ悲痛なシーンの数々、思わず目をそむけたくなるような悲惨な出来事、そして信じたくないことに、これらの地獄の光景はかつて現実に起きた真実なのだという。戦争は、国家を蹂躙し、社会を破壊し、家族を離散させ、人間の魂を荒廃させる。たいせつな家族や恋人、友人を奪い、人生を茶苦茶にぶち壊す。その重すぎる事実を前に、胸が痛む。<P> 絶望の淵にあって、なお絶望の底に沈まなかったシュピルマンを支えたものは音楽だった。そう、ポーランドこそは、ショパンやヴィエニャフスキーやシマノフスキーといった偉大な作曲家を生み、フーベルマンやルービンシュタインやシェリングといった偉大な演奏家を生んだ音楽大国であった。シュピルマンも、ポーランドが生んだ偉大な音楽家の一人である。<P> 最後まで見るのはつらかった。けれども、この世で大切なものは何か、という大事なことを教わった。良い映画であった。

この映画はドイツ語の台詞がひとつのカギとなっています。ドイツ軍は皆、ユダヤ人をdu(貴様、キミ)呼ばわりしています。Duはよほど親しい友人か、見下した相手に対してしか使わない二人称です。横一列に並ばせたユダヤ人たちの中からドイツ兵が恣意的に何人かを一歩前に出させた末に射殺する場面がありますが、この時もドイツ兵の台詞は「Du!=お前(前に出ろ)」という一言です。<P> しかし、隠れていたシュピルマン(ドイツ語ならシュピールマンSchpielman=演奏者、を連想させます)を見つけたナチのホーゼンフェルト大尉は彼をduではなくSie(あなた)で呼びかけます。Sieというのは初対面の人に呼びかける丁寧な二人称で、ドイツ人は親交を深めるうちに、「これからはSieではなくduで呼び合わないか?」と尋ね合った末にようやくduを使うというのが一般的です。<P> ですからこそ、Sieで呼びかけられてシュピルマンは目の前の将校が他のナチとは違って自分を人間として遇してくれていることに一瞬にして気づくのです。大尉の「ピアノを弾いてくれますか」という比較的丁重な依頼を受けて、おそらく自分は曲を弾き終わったところで殺されることはないだろうというかすかな確信をもってシュピルマンはピアノに向かったはずです。<P> 英語にはドイツ語のようにduとSieという二種類の二人称がなく、すべてyouで表現するため、英訳台本をもとに日本語字幕を作るとドイツ語の台詞が正しく翻訳されません。劇場公開時の字幕では大尉があたかもduで呼びかけているような乱暴な日本語になっていました。DVDとビデオではぜひ改善してほしいものです。さもなければ、シュピルマンを助けた大尉の人物像が正しく伝わらないことになるでしょう。

シュピルマンは戦争で家族を亡くす。<BR>けれど、彼は有名なピアニストだったため、仲間や地下組織の力を借りて生き延びる。彼は、いつも与えられる人間だった。<BR>才能があるから生き延びることのできる彼を、最初は疎ましく思った。<P>ワルシャワ蜂起がきっかけで、彼は自分の力で生きていかなければならなくなる。<P>隠れ家でドイツ人将校に見つかったときも、彼はピアノのおかげで生き延びる。<BR>このとき、あることに気がついた。<BR>戦争という危機的な状況の中で、人々は生きる望みを彼のピアノの中に求めていたのかもしれない、と。<BR>ポランスキー監督が、主人公にシュピルマンを選んだ理由は分かりません。<P>けれど、無力な彼を主人公に据えることで、戦争の悲惨さや無意味さが痛いほど伝わってくる作品になったと思います。<P>瓦礫と化したワルシャワの街で、シュピルマンが独り立ち尽くすシーンがあります。<BR>荒涼とした街と対称的に、エイドリアン・ブロディの赤子のように澄んだ瞳が印象的でした。

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戦場のピアニスト&nbsp;&nbsp;&nbsp;2002年のカンヌ映画祭においてパルムドールに輝いた『戦場のピアニスト』は、ロマン・ポランスキー監督が指揮することを運命づけられた映画である。幼少時代をナチス占領下のポーランドで過ごしたポランスキー監督こそが、ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)の自伝を映画化するに相応しい唯一の人物と言える。ナチスのワルシャワ侵攻を目の当たりにし、死の収容所送りを奇跡的に逃れたシュピルマンは、ゲットーの廃墟に身を隠すことで第二次世界大戦を生き延びる。ナチスのホロコーストを映画化したこれまでの作品とは異なり、主人公の視点から忠実に描写され、ポランスキー監督によって壮大なスケールで戦争を描いた奥行きのある叙事詩となっており、シュピルマンが希望を捨てずに粘り強く生き延びる様子と、彼が逃げ出すことを拒んだ街が徹底的に破壊される様子とを対比して浮かび上がらせている。一切の妥協を排して肉体的、感情的な真実性を追求することにより、『戦場のピアニスト』は希望と精神的純潔性の究極的な調べを奏でている。『シンドラーのリスト』と同様に、人間性の最も暗い部分を描き出した偉大な映画の中の1作である。(Jeff Shannon, Amazon.com)
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