血沸き肉踊る映画。次から次へと障害があって、それを次から次へと取り除いていく映画。脚本執筆は共同作業だったようですが、アイデアを出すのが本当に大変だったろうな思います。<BR>一時期、妙に理屈っぽくなったこともある黒澤監督ですが、「用心棒」、「椿三十郎」と並んでゴチャゴチャ言わないでまあ見てよ、文句なしに面白いからさあという映画です。
黒澤が下り坂に入ったことが見て取れる。七人の侍や野良犬のテンポのよさに比べ、石山を登る場面など描写がくどい。千秋、藤原の演技はわざとらしく、長丁場のコメディーを支えきれていない。一番うまいのは、台詞がひとつしかない三井弘次。しかしその台詞がみごと。「どん底」の喜三郎といい、「天国と地獄」の新聞記者といい、この人はいつも抜群。
昭和30年代の黒澤作品、特に娯楽大作映画はどれも世界最高レベルの出来<BR>だが、この映画もご多分に漏れず素晴らしい長編戦国ロマンに仕上がっている<BR>。身分を隠し切り抜ける姫役の上原美佐の素晴らしさ・カッコよさは・力強さ<BR>は、後に多数出てくる同種映画の凡百のヒロインに比べ群を抜いている。<P>脇役・主役・ヒロインの各人物設定と配置の素晴らしさ、長時間を飽きさせな<BR>い山あり谷ありのストーリー展開など、全てにおいて非常に隙の少ない名作。<P>今このレベルの映画を撮りきれる監督やスタッフは、果たして世界で何人いる<BR>だろうか? こうした過去の名作のプロットは、日本では映画ではなくゲーム<P>ソフトに活かされているんだろうなあ。(良くも悪くも)