映像自体は、古いものなので決して美しいわけではない。<BR>だが、そこに映るものの不可解さ、気味悪さ、見るものに不快感と同時に<BR>暗い快感も与えてくれる。<BR>哲学的、背徳的、逆説的な短編集。<BR>思わずジーッと見入ってしまう、精神的な恐怖がある。<BR>ドラッグムービーに近く、ストーリー性よりは世界観を楽しむもの。
現代によみがえったシュールレアリスト、ヤン・シュヴァンクワイエルの短編集。人間が内包する暴力性や性への欲求を彼独自のレトリックで再現する。その意味で彼はフロイト派の生き残り、いや、具現者だと言っていいだろう。<P>特に表題作『ジャバウォッキー』は鮮やかな色彩と不思議なリズムが魅力的。アンティーク・ドールやブリキの兵隊が意志を持って動きだし、無気味な動きをはじめるが、重くならずにユーモアを感じさせるところが特にいい。<BR>この不可解で不条理な世界にはまるとクセになってやめられないこと必至。抑圧された日常のガス抜きをはたす逸品。
短編集。「G線上の幻想」「家での静かな一週間」は映像哲学の歴史的傑作。形而上の魔術的操作がリアリティとして発現した世界。別位相からの観測によっても意識下の何かが符合する。<P>「機械的」という形容は一見逆説的に聞こえるかもしれないが、映像がそうであるように、この現実の一瞬一瞬を紡ぎだす何者かの「操作」への憧憬が、感覚に訴えかけているように感じられる。「ジャバウォッキー」の解釈は割と容易かもしれないが、悲壮なユーモアを素直に感覚で受け止めて欲しい作品。