いやこれは長かった。映画は総じて前後2部に分かれていると考えてよいだろう。衝撃的なバスジャック事件と、役所広司演じる主人公のその後と、彼を取り巻く人間関係を描く前半、同じバスジャック事件に遭遇した兄妹との再生の旅を描く後半。最後はある種の開放感を感じさせ、その後の彼らの人生が決して暗いものではないであろうことを予感させる。背景で連続的に起きる殺人事件が、物語に一種の緊迫感を与えている。私は犯罪心理学には明るくないが、バスジャック事件の精神的トラウマと動機なき無差別殺人の結びつきはいかんせん弱く、そこだけは釈然としないものを感じる。
九州を舞台にした映画であるため登場人物たちの台詞は九州弁を使っている。僕が九州出身であるだけに,登場人物たちの台詞から伝わってくる感情や雰囲気が身近でリアルに感じられ,映画を見ている最中に自分の周りにいた人たちの事を思い浮かべた。映画を字幕で見ることや,他の国の言葉で歌われる歌を聴くことについて考えることが時々あるのだけれど,同じ日本語でも自分が感じ取れる意味や雰囲気に差があるということを実感した。<P> そういった意味で僕にとっては印象に残った映画であったわけだけど,エンディング部分で,最後までバスに残った二人が出した結論が何であるのかはわからなかった。バスに乗っていた4人の内半分が途中でバスを降りたのだから,それぞれが同じ答えを出したというわけではないのだうし,全員が救われたわけでもない。僕は二人が出した答えをはっきり言葉にはできない,ただ最後の二人の笑顔や広々とした風景が印象に残った。
最初にこのDVDが届いた時、嬉しくって平日の真昼間から興奮状態で再生したのだが、失敗だった。そういう感覚で挑戦できるタイプの映画ではないのだ。出来れば翌日が休日という日の深夜にのんびりした気持ちで、長い目で観てやって欲しい映画である。型破りなんだか、何なんだか、上映時間3時間30分である。音楽も殆ど無い、では奇抜な展開を期待したい所だが、ハッキリ言ってそれもない。ではそれだけの長時間いったい何が客を引き付けるのか!?正直って、引き付けられないのではなかろうか。ハッキリしない無口な男と、もっとハッキリしない子供達との静かで時間の掛かる結びつきが主題なのである。<P>むかし青山真治監督が喋ってるのをTVで見た時「要領を得ない人だな~」と思っただが、彼の映画も要を得ない。それだけに、そんな青山映画のペースにハマってしまうと、なんとも言えない幸福感を味わうことが出来るのである。今回(役所孝司)が演ずる男は、不幸で静かで優しい男であるが、これが全く「適役!」なのである。また(斉藤陽一郎)演ずるカランとした若者もこの映画に似合わない様で、この映画を非常に救ってるキーパーソンなのである。どうもこの映画についてはウマク書けないが、明らかに感覚で楽しむ映画だと思う。ただファッションぽい監督の独りよがり映画ではなく、ストーリーはしっかりしてて、分かりやすいからご安心を。一つだけ文句を言わせて貰うなら、主人公の一部である子供達の母親と(国生さゆり)が似過ぎてて、そこを誤るとストーリーが滅茶苦茶になってしまう。あれは別人です!そこだけは頭に入れて観て欲しい。