思いつくままに印象に残る不気味なシーン、イメージを列挙します。<BR>1.サム(ジョナサン・プライス)の夢の中の理想の恋人(キム・グライスト)を幽閉する地面からそそり立つレンガの壁<BR>2.理想の恋人を救出しようとするサムに立ちはだかる鎧武者<BR>3.やっとの思いで倒した鎧武者の仮面をサムがはずしたときに現れる自分自身の顔<br>4.サムの行く手を阻もうと邪魔するゴーレムとなった役所の上司(イアン・ホルム)<BR>5.母親の葬儀と若返った母親、棺桶の中に安置される若返り手術で不要となった母親の身体パーツ<BR>6.新聞紙に絡まれながら消えてしまうタトル(デ・ニーロ)<BR>7.拷問の様子と容疑者の自白をすべてタイプしてしまうタイピストがはめているギブス<P>8.ドーム型の広大な尋問(拷問)室と歯科医療器具を思わせる拷問道具、尋問者がつけているお多福のマスク<P>いろいろ分析が出来そうな悪夢的なイメージの数々です。
『12モンキー』などで知られる、奇才テリーの最高傑作。見過ごせないのは、この作品が製作された当時の社会が、現在のようなデジタル社会でもIT社会でもなかった点だ。しかし、その中にあってこの監督はデジタル社会の本質を見抜いていたばかりか、その時代の楽しみ方も披露しているのだ。デジタル=情報の劣化が無い社会に於いての最重要課題は、如何に情報を劣化させるかに掛っている。アナログの時代では、情報の劣化を防ぐ為に、意思の統一を図り、情報のスピードのレスポンスを上げることに終始してきた。しかし、デジタル化された今、その手段は今後益々通用しなくなるに違いない。『バウリンガル』などがデシタル記号のいい例だろう。これが出来る、アレも出来る、では無くデジタルをあくまで記号として捕らえ、何をするか、何をしたいのかが各企業にとって、頭を悩ます事になるに違いない。その意味でこの映画は、現在進行形だ。話の発端から(劣化)して爆笑だし、コミカルとレトロなメッサーシュミット、官憲(デジタル)とテロリスト(アナログ)。そして、まさに降って湧く救世主。って、お前のせいだろう、おい!。そうこの映画は、「毒を食らわば皿まで」だ。何だか分らなくてもいい、最高に非常識で映画の枠を超えたエンターテーメントなのだから。
カルトムービー特集というと必ず紹介されている『Brazil』。これだけ有名だとホントにカルト?って感じもあるが、場末の映画館で観客3人で見たのが懐かしい。当時の某映画雑誌のベストムービーのベスト5にランクインしたが、ワーストムービーランキングでは堂々の1位に輝いていたっけ。ギリアムのブラックジョーク満載のSF映画。絶対にハリウッド主導では作られない(作れない)映画。なんといっても映画タイトルの由来となっているテーマソング『BRAZIL』の使い方が秀逸。エンディングで主人公が口ずさむシーンでは明るいはずの曲が、信じられないほど悲しく冷たく響く。このエンディングをアメリカでは当初変更して公開しようとしたらしい。そんなアメリカ人(ハリウッド)の感覚には?待ちに待ったDVD。