この映画は「面白いか面白くないか」という基準で観てはいけないのかもしれません。<BR>清順独特の美しくシュールで奇抜な世界を観ているうちに、<BR>主人公同様、観客も次第に「夢と現実」の区別がつかなくなっていきます。<BR>最初観た時は本当にわけわからず、突然訪れるラストに呆然としましたが、<P>繰り返し観るうちに「あ、そういう事か!」と点と点が線でつながる<BR>快感にはまってしまいました。観る者の知性を刺激する傑作です。
中砂の娘豊子が主人公の青地に向かって手招きをしているラストはぞっとしますね。遂に青地も引きずり込まれたか・・と思ってしまいます。小さな子供のころ、得体の知れない物音や姿が見えないのに誰かのしゃべっている声がすると想像力がふくらんでとても怖い思いをしたのを覚えていますが、この映画はそんな感覚でいっぱいです。恐怖だけでなくどことなくおかしくてたまらないユーモアも混じっているのです。現実は歪み、夢か幻か境目はどんどん曖昧になっていきます。文字どおり狐につままれたような感覚になってしまうのです。 海と山、江ノ電、切通しのむきだしの岩肌など鎌倉の独特の魅力も随所に味わうことができます。
悪夢の中に放り込まれたような怖さがあるが、でも目を逸らせられない。 それどころかまた初めから見入ってしまう。 そして何度見ても飽きない。<BR> こんな凄い映画は他にない!