これは、映画というよりも、一篇の詩です。台詞のすべてが、音楽というミュージカルも後にも先にも、見たことがないし、しかも、その音楽に無理がなく、とても自然に最初から最後まで、流れていく。チャイコフスキーの楽曲より有名ではなかろうか、と思われるこのメインテーマは、これを聞いているだけで、哀しくなってくるし、このDVDを観る大昔から、当然、この音楽だけは知っていた。この作品の音楽の編集は大変だったと思うけれど、難しいから、後からもこのパターンのミュージカルはあまりないのだろう。青春の恋の哀しみは、様々な形をとって、いつの時代でも、誰しもが持っているものだと思う。その哀しみをここまで、ストレートに描き、そして、成功している作品はそんなにはない。カトリーヌ・ドヌーヴが、メインテーマの歌を歌いだすシーンには、何か、鳥肌がたつようなものを感じた。そして、ラストシーンは、大人の二人がいる、青春の終わりと哀しみを描いて感動的である。
ミュージカル仕立ての作品でありながら、アメリカのミュージカルのような陽気で現実離れの空騒ぎでは決してない。はじめは恋愛に浮かれていたナイーブな二人には、やがて戦争という無情な現実が重くのしかかってくる。まんざら不幸せな結末でもないけれども、夢のようだった恋仲が不条理の現実によって引き裂かれた喪失感が見る者の心を痛める。確かに、未成年同士の恋愛から始まった主人公の二人の関係は、観る人によって必ずしも好ましいとは思えないかも知れない。しかし彼らのした事はごく一般的な若い人がやりそうな事なのに、そのために支払わされた代償はあまりにも大きい。<P>6年もの歳月の物語を1時間半の映画に過不足なく凝縮してまとめ上げた監督の手腕に感心。悲しい映画にありがちなだらだらした感じも無い。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞するのは頷ける。主演のカトリーヌ・ドヌーブとニーノ・カステルヌオーヴォは、主人公たちの人間的成長をよく表現し、脇役陣も好演。ただ、歌唱力に関しては全体として少々ばらつきがあるのも否めない。別に聴くに堪えないほど悪いわけではなく、むしろそこら辺のアイドル歌手よりずっと上手いと思うが、プロ歌手並みの歌はちょっと期待できない。<P>フィルムは監督の妻アニエス・ヴァルダの監修のもとで1992年にリニューアルされたものらしい。字幕はオフできないスーパーインポーズのものだ。
正直言いますと、DVDは所有していません。サントラを持っているので本来ならサントラ部門でレビューするべきだと思います……<BR>が、しかし、本作の魅力は可憐にして魔性の香り漂うカトリーヌ=ドヌーヴ抜きでは語れず、そして彼女は実は歌っていないという事実がある以上はDVDのほうでレビューを書かせてもらいます。<P>台詞が全て歌で構成されたミュージカル映画の代表的作品で、その構成に好悪は分かれますけれど、純粋な映画でもおそらく屈指の名画になったと思われます。<P>なんといってもカトリーヌ=ドヌーヴの可憐さが特筆です。<P>ジャンヌ=モローやシモヌー=シニョレ、ブリジット=バルドーなどの歴々たるフランス女優の歴史の中でも、燦然と輝く大女優のデビュー作です。<P>これほどまでに彼女の役!者人生のスタートにふさわしい役柄は考えにくく、夢見がちで純粋な少女からアプローチを受けて戸惑う女心を表現することに成功しています。<P>そして、車中のラストシーンで見せるあの寂寥たる現実感は後の大女優の香りを既に忍ばせています。<P>撮影時にはドヌーヴはまだ10代でした。お腹には子供もいました。そういった背景の上で、たとえ歌は吹き替えとはいえあれだけの演技をして見せるのですから、充分にこのDVDをご覧になる価値はあります。<BR>買われて損はないはずです。<P>個人的には彼女の全集が出るのを気長に待つつもりですけれど。