エッフェル塔を背景に、ジョルジュ・ドンが『ボレロ』を踊るラストのシーン。<P>ゆったりとした三拍子で同じシークエンスを繰り返すこの音楽は、その直前の精神病院の庭のシーンからすでに始まっています。<P>同じ場所を行ったり来たりしている患者達が、まるで踊っているかのように見え、それは戦争と愛憎の悲喜劇を繰り返す人類の宿業の姿のようでもあります。<BR>映画は、その哀れな人間たちの魂を導く。<BR>観客と共に、あのラストシーンへと連れていく。<P>多数の登場人物たちの複雑な人生とジョルジュ・ドンの力強いバレエが、『ボレロ』の繰り返す旋律と相俟って、かつての敵味方の壁を越えて開催された赤十字・ユニセフのチャリティー・イベントの趣旨、その意味を極限にまで拡大してゆく。また、そのテレビ中継を見る人達のカットが素晴らしい!<P>「テレビを見ている人」をこんな風に撮った映画は他には無いと思う。<P>ボレロを踊っていた在りし日のソ連の少女は、老いた今も鉄のカーテンを越えられません。まだ冷戦時代でしたから・・。それでも、西側に亡命した息子の踊る姿を衛星生中継で観ることはできたんです!<BR>隣で優しい顔をしていたジェラルディン・チャップリンも忘れられない。<P>やっぱ、傑作は違うよ。
今までに見た映画の中でも本当にすばらしい作品です。戦前、戦中、戦後を通して繰り広げられる人間関係のつづれ織り、そして、最後にひとつになって、感動とクライマックスのうちに幕を閉じます。同じ役者さんが二世代を演じたりするのでちょっと、混乱するかもしれませんが、きれいな音楽とともに重みのある映画です。
とっても長い映画。でも頑張って最後まで見ると、最後にジョルジュドンが踊るボレロが、全登場人物のそれまでの人生のそれぞれの思いを昇華しているとことを感じることができる。<P>個人的には、途中でカラヤンと思われる指揮者が、ブラームス交響曲第1番を指揮するところが大好き。自分のある行いの意味することを、哀しみとともにすべて受け入れようとする彼の気持ちが、第一楽章のティンバニの一音から第四楽章の終わりまでの間によく表現されていると思う。さすが、ルルーシュ監督って感じ。