私も犯人の思考過程はちょっとはかりかねますが、この映画の魅力は謎解きではなく、むしろ登場人物にあるのではないかなと思いました。小田切警視長のシブさといったら、もう、筆舌に尽くしがたいです。蘭ちゃんを心配する小五郎や英理さんも人間味にあふれて性格がよく伝わってきますし、なかでも園子の友を思う気持ちは胸を打ちます。また、佐藤刑事が瀕死の重症を負うなか、動揺する気持ちを抑えて捜査にあたらねばならない刑事さんたちの気持ちもよく表現されています。しかし、何といってもコナン君×蘭ちゃんファンなら叫びすぎて声が枯れるほどの場面が山盛りで、クライマックスの演出もとてもすてきです。<P>ただ、私がちょっと残念に思うのは、少年探偵団の活躍が後半は全くなかったことです。確かにあの展開では探偵団の出る幕はないのですが、前半あれだけがんばったので、あれあれ？と思いました。もうひとかかわりほしかったです。ともかくも、コナンファンなら絶対に見ておかなければいけない一作だと思います。

コナンはミステリーだから人が殺されるのは仕方ないが、この作品ぐらい銃を前面に立てて派手に人を撃つ作品はない。特に佐藤刑事の撃たれ方はひどく、子供には絶対に見せたくない。犯人も、第１作のパラノイア的だが崇高な誇りのあるアノヒトや、第２作の繊細過ぎて心の傷から精神バランスを崩して殺人に走るアノヒトにはある種理解できる面があるが、この犯人は自分の殺人を隠すために全く関係のない人を平気で次々に殺し、しかも、そこに至る精神の軌跡も全く描かれていないため、同情の余地なしどころか胸が悪くなる。また、コナンに蘭を守らせるために蘭を記憶喪失という形で封じ込めてしまうなど、キャラの本来の持ち味を生かそうとせず、コナンと蘭の見せ場をつくるためにだけにこの作品はつくられたと思わざるを得ない。<BR>とはいえ、ストーリー運びに余り無理はなく、警視庁の面々はよく描かれているし蘭の記憶が戻る描写はすばらしく、終盤こそは本来のコナン！と思わせる。<P>まあ、コナンがいつものように誰かを使って推理するのではなく堂々と犯人の前に姿をさらして見事な啖呵を切り、蘭にまで告白するといった、（当時）決して見ることのかなわないコナンという意味でコアなファンにとっては文句なしにたまらない一作ではあると思う。