もう何十回と観たことか。実力派を揃えたキャスティング(特に脇役)、穏やかさと緊張感が交錯する映像、惨劇の連鎖をつむぎ出す絶妙な演出……。話の筋がわかってもなお繰り返し観る理由はそんなところにあります。犯人探し? そんな単純ではないです。複雑にリンクされた登場者たちの思惑をたどってみてください。昔の映画? 人間の非情さには今観ても戦慄を覚えるでしょう。市川崑監督、深いです。俳優の印象的な演技も、すべては監督のキャスティングがあってこそ。特に加藤武、大滝秀治、草笛光子、坂口良子の演技はぜひ!
大滝秀治・三木のり平・坂口良子の『脇3役』があってこそ何度でも観てしまう(獄門島しかり)。でも何より惹かれるのは映像・セリフ・ストーリ・音楽すべてにおいて『どうにも日本を感じてしょうがない』為だ。ミステリーの中核をなす『土着的因習』も『光と影』として受容すると喜びともせつなさとも言えない深い感動・充実感を覚える。そういう感性で言うと『黒澤作品』は実に日本映画らしくないと思ったりもするが。本作品を堪能された方は無意識に『内なるDNAに刻まれた日本』に触れ、『八つ墓村』の惨殺にひた走る山崎努のシーンに散る桜を観る段に至って、更にそれが自覚されるのではないだろうか。
他のレビュアーの方も触れていますが、<BR>映像の重厚な厚みと美しさは凄いです。<BR>日本家屋の光と影、瑞々しい風景が鮮やかに描かれ、<BR>安っぽいところがゼロ。<BR>そして、本作から「女王蜂」まで一貫していた<BR>あのスタッフ・キャストクレジットの出し方は<BR>『いいセンスだなあ』と深く感嘆してしまう。<BR>この映画公開時は小学生だったけど、横溝原作・市川演出の<BR>このシリーズは、僕らの世代の『映画の恐怖感』という感覚の<BR>バックボーンになってる方は多いんじゃないでしょうか。<BR>そして背景に通低している、悲しい人生がしみじみと切ない・・。<BR>この頃から80年代前半の角川映画は出色の映画が沢山あります。<BR>角川春樹という人は映画を『ビジネスとして成功』させるとともに、<P>『作品も恥ずかしくないもの』にする、というビジョンをもった<BR>理想的な統括責任者だったんでしょうね・・。<BR>洋画も邦画も興行的成功だけで、中身は適当という凡作の多い昨今、<BR>この作品の面白さと完成度の高さは、輝いています。<BR>追記:<BR>このシリーズに出てる坂口良子さんはすごく可愛いですね。<P>彼女や三木のり平さんらのほっと息をつかせてくれるユーモアの<BR>あるシーンも大好きです。