初めは淡々と物語が進んでいくけれど、途中に”ある仕掛け”が仕組んであります。(フッフッフッ。)ちなみに言っておくと、私は特に松たかこさんのファンという訳ではないし、この映画全部で70分と短かく、わたしが本当に好きなのはその中のわずか10分強である。にもかかわらず何のためらいもなくソフトを購入したくなってしまうという事実に、岩井俊二監督の手腕、そして映画の可能性というものを感じてしまわずにいられない。
岩井俊二得意の、「日常の中の非日常」。日常的的な展開が淡々と進むことで、ラストの傘のシーンが際立ってくるんですね。dtsで再生すれば、雨音や電車のドアの閉まるシーン等がホントにリアル。音までも日常風景にこだわったつくりなんですね。「Love Letter」がOKならばツボにはまることマチガイナシ!女の子的な発想をさせたらピカイチですね、このお方は。劇中劇「生きていた信長」はクロサワ的で遊び心も十分。
見る前は、①日本映画②岩井俊二(誰だか知らん)③松たか子(タレントさんでしょ?)④どうせしょぼいラブロマンスでしょう~、といった愚かしい思いこみにより、避けていました。が、見て目からウロコです。ファンの皆様、理由もなくバカにしていてすみませんでした。松たか子は、大学進学のため田舎から上京し、周囲に溶け込めきれず、また自己主張もどうしていいかわからない女の子を好演しています。最後には、「この子はこうやって都会で生きていくのだな」と、ほっとした気持ちで見終えることのできる映画です。一つ一つのシーンで、松たか子は丁寧な、嫌味ない演技をさりげなく見せています。自分自身が、新しい環境に身をおき、とまどった経験のある人が見れば、きっと共感する部分があると思います。松たか子、岩井俊二に興味の無い人こそ見てみてください。ファンなら急いでみましょう。 劇中劇として、松たかこが見にいく映画で、「生きていた信長」(でしたっけ?)という作品があるのですが、江口洋介と元・米米CLUBのカールスモーキー石井がこそっと出ています。ビデオやDVDでは、映像特典として見れるので、そちらも御見逃しなきよう。